中国の不動産大手、中国恒大集団の債務危機が先週からメディアを賑わせていますね。今日は中国恒大(Evergrande)の債務危機の内容を押さえた上で、投資家としての備え方について学びたいと思います。今日は株でも仮想通貨でも債券、為替でも、あらゆる投資商品を対象として想定した話です。
先日「仮想通貨全面安! 中国が仮想通貨を全面禁止!?」というブログ記事を書きましたが、今日は仮想通貨全面禁止のニュースの数日前に報道があった中国恒大の件を取り上げます。
中国恒大ショックへの投資家の備え方
中国恒大ショックが起こるかどうかはわかりません。リーマンショックのような大事件にはならずに済む可能性もあれば、史上最悪の危機に陥る可能性も決してゼロではないと思います。こういう時に投資家は常に情報を収集し、どちらに状況が転んでも良いように準備をしておく必要があります。僕は既に行動を始めていますが、投資家として重要と僕が思うのは以下のポイントです。
①まず自分の持つ資産の中身を再確認すること
(そういえば何の銘柄をいくら持ってるんだっけ?という人はまず把握から始めましょう)
②自分の資産にすぐにアクセスできる状態を保っておくこと
(自分の口座やウォレットにログインできない、パスワード忘れた、なんてことがないように)
③リスク回避のための一部売却を検討する
(現金化しておくことはリスクの高い相場環境では決して悪くない選択肢です)
そもそも中国恒大集団ってどんな会社?
僕はサッカー好きなので中国恒大の名前をずっと前から知っていました。サッカー好きならみんな知っている中国クラブが広州恒大です。元イタリア代表のカンナバーロが監督を務め、ブラジル代表のパウリーニョが所属するアジア屈指の巨大クラブです。かつてはロビーニョやジラルディーノも在籍していて、監督にはリッピやスコラーリも名を連ねています。まだ中国サッカーの地位が低かった2010年に 中国恒大がチームを買収して巨額投資を行って一気にクラブが強大化しました。この頃に上海上港や江蘇蘇寧などが中国マネーで一気に欧州のトップクラブから現役選手を引き抜いてサッカー界の一大センセーションになりました。
さて、サッカーの話はさておき笑、話を元に戻しましょう。「中国恒大」とよく報道されますが、正式名称としては恒大集団(英語: Evergrande Group)、中国の広東省深圳市(シンセン)に本拠を置く(登記上の本籍地はケイマン諸島)不動産開発会社です。不動産開発が本業ですが多角経営をしていて、上記のプロサッカークラブ経営に加えて、「恒大冰泉」ブランドのミネラルウォーターの販売、レアル・マドリードとの提携でサッカースクールの恒大足球学校の運営、観光業、インターネット関連サービス、保険、ヘルスケア…と続き、電気自動車 (EV) 事業にも進出しました( 中国恒大新能源汽車集団=”恒大汽車”、全然売れてないらしいですけどね…)。
創業者の許家印さんはフォーブスによれば2019年3月時点で362億ドルの資産を有し、世界22位、中国3位の富豪とされています。また同族経営であり、2019年の「グローバル・ファミリー企業500社ランキング」で25位にランクインしています。
恒大集団の2021年上半期(1~6月)決算によると、売上高は約2220億元(≒約3兆7857億円、前年同期比▲17%)、営業利益は約250億元(≒約4367億円、同▲46%)です。売り上げ規模的には年間8兆円規模と考えると、日本で言えば日立製作所、三井物産、パナソニックくらいの規模の会社ですから相当の大企業と言えます。また、少なくとも上半期時点では営業利益も確保できていました。(こういう水面下の危機は営業利益だけ見ていても気づけないので意味はないんですが。)
中国恒大の債務危機の内容は?
さて、中国恒大の債務はどのくらいかというと、日本円で33兆円と言われています。危機が発覚したのは、中国恒大が借り入れの利払いをできなかったこと、販売した資産運用商品(理財商品)が期日までに全額返済されず投資家が本社に押し掛けたこと、がきっかけです。
9月23日に国外社債8353万ドル(約93億円)については利払いが延期され(支払いができなかったということ)、30日間の猶予期間に入っています。9月29日には別の社債の利払い期日も予定されていて、この支払いも厳しいと見みられていたのですが、グループの保有する盛京銀行の株式を国有企業に100億元(約1700億円)で売却すると発表しました。
これによって当面の資金繰りは確保したということなのかと思いますが、危機は終わっていません。形式上は債務不履行(デフォルト)になっていませんが、営業上の支払いも滞っていると噂されていて、実質デフォルト状態に思えます。この後も利払いは続きますので、どこまで資金繰りが持つのでしょうか。
資金が持つ間に抜本的な対策を講じることができなければ最悪の事態が…という懸念が残ります。仮に当面しのいだとしても、年明け以降も社会の利払いや元本償還が続くようで、特に22年3月~4月あたりに償還が集中しているとのことなのでまだ予断を許さない状況です。
リーマン級の債務危機は起きないとの見方もあるが?
メディアの報道を見ていると、リーマン級の債務危機は起きないと主張しているメディアもそれなりにあります。彼らが第二のリーマンショックにはならないと主張している理由は何なのでしょうか?
リスクが見えていること
これが一番多い主張ですね。33兆円という金額は大きいですが(日本の国家予算の約1/3)、それでも金額規模がわかっていることが大きいという主張です。これは理解できなくもありません。
リーマンショックの時はサブプライムローンと言って本来ならローンを借りられないような信用力の低い人たちにもジャンジャン住宅ローンを貸し出して住宅市場の過熱を招き、更にそれが複雑に証券化されたデリバティブ金融商品として販売されたことで、購入した投資家もリスクを正しく認識することなく購入していた為に危機が膨れ上がりました。この複雑な金融商品の仕組みのせいでリスク金額を把握することは困難だった為、果たしてどこまで膨れ上がるのかという不安を市場が覆いました。僕も当時株式投資を始めて数年のヒヨッコだったので、市場の動揺をよく覚えていますし、僕も動揺していました。
中国国内に影響がとどまること
リーマンショックの時は複雑に証券化された商品が世界中の投資家に直接間接に広く出回っていると言われました。しかし今回の中国恒大の社債や金融商品の購入者は大部分が中国国内で、世界的な影響は限定的だと言われています。
これについては日銀の黒田総裁も「中国から世界に広がる大規模な金融危機が起きる公算は小さいと考えている」と発言しています。FRBのパウエル議長も同様の趣旨で発言されています。
では影響はないと安心してよいのか!?というと、そうではないと私Cukは考えます。なぜなら、この中国恒大が仮に危機を乗り越えたとしても(というか私は中国恒大単体は何とか乗り越えるのではないかと思っていますが)、実は水面下に同様のデフォルト危機を抱えている企業が山のようにあって、それが今回の危機によって表面化するのではないかという懸念があるからです。
中国の不動産業は以前からバブルが警戒されている産業の代表格で、崩壊しても中国当局が隠している事実もたくさんあると噂されており、私は以前から警戒をしています。「氷山の一角」という言葉がありますが、この水面上に現れている小さな部分が中国恒大だとしたら、その下にどれだけの隠れ債務があるのか…。ジャンク債と言って格付けの低い債券が世の中には多くありますが、それらがドミノ式に倒れた場合はリーマン級のショックになります。そうはならないことを願いますが…。
中国恒大ショックへの投資家の備え方
さて、では中国恒大ショックが起きても良いように、投資家としてはどう備えるべきなのか、最初に記載した3つのポイントです。
①まず自分の持つ資産の中身を再確認すること
自分がいくらの金額を、何の金融商品で、何の銘柄で持っているのか、正確に把握しましょう。ポートフォリオを確認することはリスク回避をする以前の基本動作です。意外と忘れてしまっていることも多いですよ。あ、そういえばこんな銘柄持ってたんだ!と思い出すことも。
②自分の資産にすぐにアクセスできる状態を保っておくこと
自分の口座やウォレットにログインできない、パスワード忘れた、なんてことがないようにしましょう。市場が大暴落して慌てて売ろうとしても、ログインすらできないでは売ることはできません。そうこうしているうちに暴落を続けて底値に落ちてしまった、なんてことは個別銘柄では僕も実は経験があります。
③リスク回避のための一部売却を検討する
大きめのリスクがある時はある程度リスク回避で一部売却すること、現金化しておくことは決して悪くない選択肢です。実際に僕もこの危機が伝わった後に長期投資家の僕にとってパフォーマンスが悪くあまり魅力を感じていなかったホンダの株を売却しました。
長期投資家の僕としてはBuy the dip(押し目買い、価格が下がった時に増しすること)が基本スタンスなので今後も将来有望で右肩上がりを続けると思っている株や仮想通貨については仮にショックが起きて相場全体が下がったら確実に買い増しをします。でもその為には今少し売却して現金にしておくことも悪くない選択肢です。今売って下落した時に買い戻せば投資としては大成功ですし、仮に下落しなかったとしても損失を被ることはないわけですから。
というわけで、適度にリスク回避をしながら投資を楽しみましょう。それでは~
Cuk
コメント