仮想通貨の歴史に残る事件、マウントゴックス事件とは何だったのか!?

仮想通貨

ここ最近はUSTLUNAの暴落でクリプト市場は大変なことになっていますね。のちのち、USTとLUNAのクラッシュについては記事を書きたいと思っています。ただ、現在進行中なので、結果が出てからにしたいと思います。

今日はUSTショック以上に市場を揺るがせた2014年の事件について語ります。マウントゴックス事件って知っていますか?

最近仮想通貨を始められた方は知らない人も多いでしょう。ぼくも当時はこの事件をニュースで知りましたが仮想通貨は怪しいとばかり思ってしまい、深く知っていたわけではないです。

でも当時経済ニュースを毎日欠かさず見ていたぼくはマウントゴックス事件が大きく取り上げられて騒がれていたことは記憶しています。(今思えばこの時になぜもっと深く調べなかったのかと後悔してもいますが。)

間違いなくこれはクリプト史に残る大事件です。仮想通貨を少しでも持つならば、クリプト界の歴史を知るという意味でマウントゴックス事件のことは抑えておきましょう。

ポイント

この記事のポイントは以下の通りです。

・マウントゴックス事件は日本を拠点とする当時世界最大のビットコイン交換所
・2014年2月28日に東京地裁に民事再生法の適用申請をして破綻した
・少なくとも2011年6月19日にはハッキングの被害にあっていて、その後もハッキングもしくは流出が相次いでいた
・返済のためにずっと交渉・調整が続いていたが、2021年10月20日に再生計画案が承認された(債権者には全額ではないが、ある程度の金額が返済されることになった)
・マウントゴックス事件をきっかけに仮想通貨の法規制やルール作りに対して各国が真剣になった

マウントゴックス社とは?

マウントゴックス社は、ジェド・マケーレブ氏によって2009年に東京で設立されました。

しかし、最初はビットコインの交換業者ではありませんでした。実はトレーディングカードゲーム「マジック:ザ・ギャザリング(Magic:The Gathering)」の交換所を目的に設立された会社でした。当時このゲームが世界中で大人気だったそうです。

マウントゴックス(Mt.GOX)の名前の由来は、「Magic: The Gathering Online eXchange」の略称です。この名前からも「マジック:ザ・ギャザリング」のための会社であったことがわかります。

Cross Office Shibuya Medio 2014-03-02.JPG

しかし、マウントゴックスは「マジック:ザ・ギャザリング」のトレーディングを行うことなく、2010年にマウントゴックス社をビットコイン交換業者へと事業転換しました。

そして2011年3月に、マウントゴックスはマルク・カルプレス氏に売却されました。マウントゴックス社は、マルク・カルプレス氏の経営下で急成長を遂げ、2013年4月には世界のビットコイン取引量の70%(!)を占めるまでになりました

ちなみにマケーレブ氏は、リップルの共同創業者であり、暗号資産ステラ・ルーメンの創設者としても知られている、業界屈指の著名人です。この人が最初からマウントゴックスをビットコインの交換所にするつもりだったのか?それとも途中で軌道修正したのか?は今となってはわかりません。

世界のビットコインの取引量の大半が、日本に本拠を置く会社で取引されていたなんてビックリしませんか?ビットフライヤーやコインチェックのような取引所が世界シェアの7割を握ることを想像したら、そのすごさがわかると思います。

ちなみに交換所の運営会社自体は日本にありましたが、利用者はほとんど海外からという状況でした。顧客数は当時12万7000人いたそうですが、日本人はこの内1000人程度とのことでした。

★補足:

ちなみにこのマウントゴックス事件が起きて以来、クリプト界でハッキングに遭うことを皮肉をこめて「ゴックスする」という表現で呼ぶようになりました。さらに、他人に盗まれるのではなく、自分で仮想通貨を失ってしまうケースもあり、「セルフゴックス」と呼ばれます。

「セルフゴックス」の事例としては、①送金をするときにチェーンを間違えて送付してしまい、その仮想通貨を失ってしまう、②秘密鍵をなくしてしまい、仮想通貨を動かせなくなってしまう、という事例があります。くれぐれもよく注意したいですね!

なぜマウントゴックスは破綻したのか?

さて、ではなぜそんなマウントゴックスは破綻したのでしょうか?その理由を確認していきましょう。

その事件は2014年2月に起きました。マウントゴックス社のサーバーが何者かによってハッキングされ、同社のビットコインと預かり金の大半が流出してしまったのです。その額は、当時の市場価格にして470億円相当でした。

もう少し詳しく見ていきましょう。マウントゴックス社は2014年2月7日に、突然ビットコインの出庫を停止しました。そして、25日にはすべての取引も停止しました。これらはお客さんに対する事前のアナウンスはなく、突然のことだったようです。

2月7日からの出庫停止についてマウントゴックス社は、「ビットコインにトランザクション展性に起因する問題が生じている」と発表し、対応を進めていると説明しました。

(トランザクション展性 Transaction Malleability:トランザクションIDを書き換えられてしまう脆弱性のこと)

What is a "block" and "Blockchain"? - BITCOINZへようこそ

マウントゴックス社は、この問題をビットコインのコア開発メンバーの協力を得て解決しようとしていると説明していました。しかし騒ぎが収まることはなく、その後も不安からビットコインへの信頼が少しずつ揺らいでいました。

ぼくも専門家ではないので詳しくないのですが、ビットコインコミュニティではこの「トランザクション展性」の問題が起きているという説明には納得できない人たちもいたようです。

(今となっては、ビットコインがSegwitを導入したことからもトランザクション展性の問題が確かに起きていたことは明らかになっています。)

しかし、同じ問題が2月11日にスロベニアの暗号資産交換業者Bitstampにも起きました。それによってマウントゴックス社の説明はウソではないらしいという認識がマーケットの中で広がっていったというのがこの当時の状況だったようです。

その後、Bitstampの問題は修正され、2月15日にはBitstampのビットコインの出庫は再開されます。となるとマウントゴックスも同じように出庫再開してくれると思いますよね。

しかし!そうはなりませんでした。マウントゴックス社も2月17日にはビットコイン出庫再開のめどは立ったと説明しています。しかし、実際には再開されることなく2月25日にはすべての取引を停止しました。

Mt.goX」nufのブログ | broken - みんカラ

取引停止後にマウントゴックス社はWebサイト上のコンテンツを削除し、Twitterアカウントのツイートも削除しました。マウントゴックス社の当時のCEOであるマルク・カルプレス氏は、同時期にビットコイン財団の役員も辞任しました。

結局、この一連のできごとからリカバリーが効かなくなり、マウントゴックス社は破綻しました。

しかし、単なる事件では終わりませんでした。マウントゴックス社の責任が問われ、マウントゴックス社の元CEOが逮捕され、長い年月をかけての原因究明と被害者への救済が行われています。

どうやら2011年6月19日にはハッキングにあっていたようなのです。そして、その後もハッキングは相次いでいたようです。つまり、マウントゴックスの管理がずさんだったのでは!?という疑いの目は今でも多くの人が持っています。

その後も事件の真相解明と被害者に対する救済は、長い時間をかけて行なわれています。

マウントゴックス事件の被害者への払い戻し

マウントゴックスが倒産するまでに失ったビットコインの量は顧客が保有する分で約75万BTC、自社保有分で10万BTC、計85万BTCです。当時の価格では470億円ですが、仮にここ1年くらいの水準として1BTC=500万円で換算すると、なんと4.25兆円!です…。

(なんせビットコインの価格が当時から約100倍になっていますからね。)

そのマウントゴックスの倒産でビットコインを失った人は何とかしてビットコインを取り戻せないものかとずっと交渉していました。そして、マウントゴックスの管財人となった小林弁護士の監視のもと、ハッキングされたビットコインを取り戻す努力もずっと続けられていました

マウントゴックス破綻 ビットコイン114億円消失: 日本経済新聞

債権者が匿名でメディアに答えていた限りではもう戻ってくることはないと諦めていた人も多かったようです。まあ皆さん仮想通貨への投資のリスクというものは十分認識していたでしょう。特に2014年以前に入っていたような超イノベーターのみなさんは!

誰もが諦めかけたその時…なんてドラマ仕立てのセリフを言いたくなるような厳しい時期もあったと思われます。それでも、長い年月を経た2021年10月20日、ついに債権者に対しての返金スキームの大枠が合意されたのです!

もちろんBTC建で全額が回収できるわけではないですよ。ハッキングされた分を全て回収するというのはとても難しいですからね。

それでも約14万1,686ビットコイン(当時の価格で9,700億円超)を回収していたので、かなり管財人はガンバったと言えるのではないでしょうか。BTC建てで20%は回収しているわけですからね。

そして円建てで言えば当時のハッキング総額の価20倍ほどになったわけですから。少しは心も落ち着くってもんじゃないですか。もちろん、債権者からしてみれば80%を失ったことには変わりないわけですが。

市場最大のハッキングが6年半以上の年月をかけて返済されたんです。これは関係者の努力の賜物と言わずして何といえばよいのか!関係者は表彰されて良いと思います。

ハッキングの被害者の方のショックは計り知れません。ハッキングがなければ今頃それこそ大金持ちになっていた可能性が高いわけです。でも、一度諦めかけた回収を一部とはいえできたことはポジティブに捉えるべきだと思います。ハッキングされたらゼロになることを覚悟する必要がありますからね!

マウントゴックス事件の教訓、意義

マウントゴックス事件は、暗号資産の安全性、信頼性を考えるきっかけにもなりました。

特にマウントゴックス事件の当事国である日本では利用者保護の観点から暗号資産に関する法整備へとつながりました。暗号資産交換業者に金融庁の登録が必要になったのも、この事件の後からです。

多分2014年の事件から数年は日本の利用者保護視点は世界から注目されていました。

でも2020年以降にクリプト普及期に入ってきたときに必要以上に規制の強い日本はイノベーションを阻害しているとの批判が出てくるようになりました。その点は否定できません。

早くからその問題点に気づいていた投資家や事業家の方々は日本を脱出していましたよね。これもおもしろい帰結です。

戦争で原爆を浴びた日本が極端な平和憲法を制定したのと同じように…。とかいうと怒られそうなのでこの辺でやめておきます。

ともかく、マウントゴックス事件はクリプト市場に残る大事件でした。BTC建てで換算するとこの金額の記録は今後も破られないのでは、とぼくは思っています。

そして20%ほどとはいえ、返済ができたという点も重要な事実です。今後もハッキング事件は必ず起こると思いますが、関係者の方はマウントゴックス事件を参考に、必ず最後まで諦めずに努力を続けてほしいものです。

また、この事件は法整備の観点でも後々のクリプト界に大きな影響を与えた事件でした。僕らが今クリプトを楽しめているのも(今日時点は相場下落で悲惨な思いをしている人がほとんどだと思いますが笑)、マウントゴックス事件のおかげです。

マウントゴックス事件の教訓を頭に入れて、これからもクリプトの世界を楽しんでいきましょう!それではまた〜

コメント

タイトルとURLをコピーしました