ポイント
この記事のポイントは以下の通りです。
- DeFi2.0とはOlympus DAOに代表される第2世代のDeFi
- 流動性が低下しないようにして既存のDeFiの問題点を解決しようとした
- ステーキングの利回りがOlympus DAOで7,000~8,000%ほど、その他のフォークプロジェクトだと数万%というものもあり、利回りで大きな関心を集めた
- 特定の個人/法人が意思決定できないDAOであることを早くから表明していたプロジェクトが多い
- Bond(ボンド)という手法を用いて新しい枠組みでエコシステムを作り上げたが、結果的には担保資産の時価総額を下回って注目されなくなってしまった
DeFi2.0とは?
DeFi2.0とはOlympus DAOに代表される第2世代のDeFiとして一世を風靡したプロジェクト群です。
Olympus DAOのフォーク(コピー)プロジェクトがたくさんできていますので、Olympus DAOのことが理解できればDeFi2.0のことはだいたい理解したと考えて問題ないです。
ユースケさんのコチラの動画も参考になりますので、どうぞ。
ちなみにDeFi2.0があるってことはDeFi1.0もあります。まあ「1.0」という言い方はあえてしないですが、いわゆる初期型のDeFiですね。
代表格はUniswap、PancakeSwap、Compound、Aave、Yearn Financeなどです。
ではDeFi1.0が抱えていた問題は何か?それは流動性の維持です。流動性とは、トークンとトークンを交換しようと思ったときに簡単に低コストで交換できるか?ということです。
DeFiプロジェクトが始まった時は高いAPY(利回り)や独自トークンの配布(Uniトークン、Compトークンなど)を絡ませて資金を集めることは難しくありません。
でも高い利回りを維持することは難しく、そのうち別の新しいプロジェクトが立ち上がったりします。そうなると人々はより高い利回りを得られる方に流れます。仮にリスクが同じだとすれば、少しでも利回りの高い方に預けた方がいいですからね。
というわけで最初は良いものの、だんだんと流動性が低くなってしまうのがDeFi1.0の問題でした。
そのため、DeFi2.0は「流動性を買い取る」という新しい方法を提案しました。DeFiで流動性を提供するときには二つのトークンのペアを流動性提供のためのペアトークン、「LPトークン」というものにします。
例えばETHとUSDCの流動性を提供するにはDeFi上でETHとUSDCという二つのトークンを同額セットにしてトークン化し、「ETH-USDC LP」(これが「LPトークン」)というものを作ります。このLPトークンをDeFiプロトコルに提供すると、流動性を提供したことになり、報酬がもらえる仕組みです。
そして、Olympus DAOの画期的だったところはもう一つあります。その流動性の買取に自分たちの発行する独自トークン「$OHMトークン」を使ったことです。
そして、「ボンド」という仕組みも生み出しました。ユーザーは$DAIや$wETHをOlympus DAOに売って、その代わりに$OHMを割引して買えるという仕組みです。
Olympus DAO側は買い取ったトークンは自分たちの準備通貨として使うことができます。そしてユーザーは割引価格で買えるというメリットがあります。
(ただしすぐに受け取れるわけではなく、5日間の間に順次受け取っていく形です。なので、その間に価格が変動するリスクはあります。)
ここまで書くと、プロジェクト側にもユーザー側にもメリットのある、Win-Winの仕組みのように思えますよね!しかし、DeFi2.0はうまくいかなかったんです。では、それはなぜなのか!?という点を学んでいきたいと思います。
なぜDeFi2.0はうまくいかなかったのか?
流動性を買い取るという斬新な仕組み、それを$OHMという独自トークンで買い取るという仕組みは画期的でした。そしてユーザーにもボンドという仕組みで割引価格で買える仕組みもありました。
そんなプロジェクトがなぜうまくいかなかったのか?それは①高い利回りばかりに注目が集まってしまったこと、②準ステーブルコインの$OHMの価格のアルゴリズムは上限設定のないものだったこと、の2点だとぼくは考えています。
まず①です。Olympus DAOはAPY 8,000%超えの超高利回りをうたっていました。結局クリプトの世界では利回りだけで投資先を選ぶ人は多くいます。当然多くの人が入ってきました。
注目を得やすいというメリットはあったと思います。でも、それだけ逃げやすい資金もたくさん入ってきたと考えるべきでしょう。他に高い利回りのところがあればすぐに逃げていく、それだけの話です。
DeFi1.0の問題としていたことが解決できなかったどころか逆に助長されているような…笑
Olympus DAOはこれをゲーム理論で説明していましたが、あの類の理論はトークン価格の上昇もしくは安定と高い利回りが両立している前提があって初めて成立する理論なので、下落を始めて資金が逆流したら止められないです。
次に②です。Olympus DAOの独自トークン$OHMは準ステーブルコインです。「準ステーブル」とはどういうことかというと、完全なステーブルではないということです。
$OHMトークンは「下限価格だけ$1で担保されていて上限は一切の制限がない」トークンです。Olympus DAOの公式にも記載がある通り、「1OHM = 1DAI」となるようにプロジェクトの準備資産としてDAIが確保されています。
ここでポイントなのは、通常のステーブルコインとの違いです。通常のステーブルコインのアルゴリズムならば上限も下限もコントロールされます。つまり、以下の両方が担保されています。
上限: 「コインの価値が1ドルを上回ったらコインの供給量を自動的に増やして1コインあたりの価値を下げて1に近づける」
下限: 「コインの価値が1ドルを下回ったら供給量を減らして(償却=Burnして)コインの価値を上げて1に近づける」
ステーブルコインについてはこちらの記事でも紹介していますので、どうぞ。
ところが$OHMトークンのアルゴリズムには下限の担保はあっても、上限は何もないトークンだったのです。その結果、どうなったか?下記にCoinMarketCapからチャートを引用します。爆上げしてしまいましたね。
高い利回りによって多くの投資家が集まり、その結果$1,320を超えるような価格まで上昇してしまいました。準ステーブルコインのはずのものが…。
ちなみに直近の価格は$18程度です。流石に$1までは下がっていませんが、APYも466%まで落ちました。まあ466%でも異常ですけどね。
株を長くやってきたぼくの感覚からすると100歩譲って数十%は良いとしても、100%を超える利回りなんてやっぱり信用できないと思ってしまいます。
Olympus DAOはこの先どうなるか?ぼくの予想としては$OHM = 1$に近づいて下落を続けるのではと思います。本当は1$ではいけないんですよ。
だってDAIの準備通貨以外にも流動性のために買い取っている資産がたくさんあるわけですから。その価値は上乗せされていないとおかしいんです。
そして残念ながらAPYも下がり続けると思います。他のDeFiトークンにも言えることですが、このトークンの用途が他にないので。DeFiトークンの課題です。
もし、どこかで下げ止まって$OHMトークンの適正価格とそれなりのAPYで安定維持することができたなら、そのときには良い運用先になると思います。今はその安定をできるかどうかを市場は見ています。
DeFi2.0の事例
というわけでうまくいかなかったOlympus DAOとその仲間たち、DeFi2.0にはどのようなプロジェクトがあったのか?確認していきましょう。
Wonderland
Avalancheチェーン上で生まれたOlympus DAOのフォークプロジェクトです。トークン名は$TIME。今でも役80,000%の高いAPYを誇っていますが、価格はOlympus DAO同様に暴落しました。
Olympus DAOがDAIでバックされているのに対し、WonderlandはMIM(Magic Internet Money)というステーブルコインでバックされています。
(つまり仕組みは全く同じ。フォークなので当然ですが。フォーク=コピーです。)
KLIMA DAO
KLIMA DAOはPolygonチェーン上のプロジェクトです。他のDeFi2.0と明確に違うのは、KLIMA DAOは環境系プロジェクトを謳っているところです。
カーボンクレジットをトークン化したBCT (Base Carbon Token)を発行しています。KLIMA DAOによってトークン化されたBCTがステーキングされればされるほど現実世界でのカーボンクレジットの価格が上がる仕組みです。
つまり、人々はCO2を排出しないように行動するということです。
この説明だけ聞くと違うアプローチをとっていればこのプロジェクトってもっとうまく行ったんじゃないかと思う部分があります…。Olympus DAO方式を取らなかったらこのプロジェクトはどうなっていたか、個人的には見てみたいな。
ちなみにKLIMA DAOは当時30,000%くらいのAPYがありましたが、価格もAPYもOlympus DAO同様に下落しました。
ROME DAO
Moonriverチェーン上のOlympus DAOのフォークです。名前の通り古代ローマがプロジェクトのコンセプトになっていて、DAO内にさまざまなサブDAOがありコミュニティ活動をできるように構成されています。
$ROMEのステーキングAPYは当初100,000%!を超えるようなすごい数字でした。言うまでもないですが、現在までに価格は大きく下落しています…。
まとめ
最初はDeFi2.0ってもしかして革命なのでは?と思わせる雰囲気がありました。でも残念ながら今では入ってきた資金のほとんどは出て行ってしまいました。
数千%とか数万%という利回りははっきり言って異常です。世の中でそんなに美味しい話が転がっているはずはないと思った方が良いです。
瞬間的にオイシイ思いはできると思います。でも、それでずっとエンジョイし続けるなんてことは無理です。
くれぐれも、高い利回りにつられて投資するのはやめておきましょう。入るとしても少額にしましょう。
良いタイミングで入って良いタイミングで抜ければ当然利益は出ると思います。でもぼくはオススメしません。少なくとも価格とAPYが安定維持する日が来るまでは。
それでも価値がゼロになったりはしていないので、まだプロジェクトとしては回り続けています。この先どこかで評価が見直される日が来るんでしょうか。
でも、仮にこのまま失敗で終わったとしても、壮大な社会実験だったと思えば面白いプロジェクトだったと思います。人類はこうやってトライアンドエラーを繰り返して進化していくんでしょう。
もしかしたら最初から頭の良い人が考えた詐欺だったのかもしれません。でも詐欺の仕組みであったとしても、そこにうまく制限を加えると優れた仕組みが生まれるという可能性もあります。
このDeFi2.0が5年後〜10年後にどのような評価をされているのかはちょっと気になります。ただの失敗と言われて片づけられているかもしれませんが…。
そうやって未来の評価を楽しみにできるのもこうやって比較的早い時期からDeFiを触っている人ならではの楽しみです。
今日はDeFi2.0は失敗だったのか?という視点で学びをまとめてみました。これからも一つずつ学んで賢くなっていきたいと思います。それではまた〜
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